演劇ユニットiakuの横山拓也が作・演出を務め、各所で大きな話題を呼んだ傑作舞台「あつい胸さわぎ」を、上海国際映画祭アジア新人賞を受賞したまつむらしんご監督と『凶悪』(13)で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した髙橋泉とのタッグで映画化!
“若年性乳がん”と“恋愛”をテーマに、揺れ動く母娘の切実な想いを繊細さとユーモアを持って描きだす。
母親を演じるのは、監督が“太陽のような温かい存在感”と出演を熱望した常盤貴子。主人公“千夏”には、圧倒的な眼差しを持ち「ドラゴン桜」(21)で注目された吉田美月喜が18歳の不安定な気持ちをリアルに演じる。
“恋”を刺激する相手役には『MOTHER マザー』(20)で賞を総なめにした奥平大兼と、演技派俳優として存在感を示す前田敦子。また、親子ふたりに重要な関わりを持つ存在として、今や日本映画界に欠かせない三浦誠己と、アーティストとしても活躍する佐藤緋美。さらに、女優以外にもプロデューサーとしてマルチな活躍をする石原理衣が物語を彩る。
「舞台を観ているとき、客席から送れなかった“千夏”へのエールを映画を通して届けたい!」と言う、まつむら監督のあつい想いがこの映画を誕生させた。
港町の古い一軒家に暮らす武藤 千夏(吉田 美月喜)と、母の昭子(常盤 貴子)は、慎ましくも笑いの絶えない日々を過ごしていた。
小説家を目指し念願の芸大に合格した千夏は、授業で出された創作課題「初恋の思い出」の事で頭を悩ませている。千夏にとって初恋は、忘れられない一言のせいで苦い思い出になっていた。その言葉は今でも千夏の胸に“しこり”のように残ったままだ。だが、初恋の相手である川柳 光輝(奥平 大兼)と再会した千夏は、再び自分の胸が踊り出すのを感じ、その想いを小説に綴っていくことにする。
一方、母の昭子も、職場に赴任してきた木村 基晴(三浦 誠己)の不器用だけど屈託のない人柄に興味を惹かれはじめており、20年ぶりにやってきたトキメキを同僚の花内 透子(前田 敦子)にからかわれていた。
親子ふたりして恋がはじまる予感に浮き足立つ毎日。
そんなある日、昭子は千夏の部屋で“乳がん検診の再検査”の通知を見つけてしまう。
娘の身を案じた昭子は本人以上にネガティブになっていく。だが千夏は光輝との距離が少しずつ縮まるのを感じ、それどころではない。「こんなに胸が高鳴っているのに、病気になんかなるわけない」と不安をごまかすように自分に言い聞かせる。
少しずつ親子の気持ちがすれ違い始めた矢先、医師から再検査の結果が告げられる。
初恋の胸の高鳴りは、いつしか胸さわぎに変わっていった……。
第 31 回ぴあフィルムフェスティバルに入選後、 早稲田大学大学院に進学。『ロマンス・ロード』が 2013年SKIPシティ国際Dシネマ映画祭長編コンペティション部門SKIPシティアワードを受賞、第18回釡山国際映画祭アジアの窓部門に正式出品される。2017年『恋とさよならとハワイ』は大阪アジアン映画祭 JAPAN CUTS Award、上海国際映画祭アジア新人賞部門【脚本賞 ・撮影賞】受賞。台北金馬映画祭NETPAC賞にノミネート他、台湾では 3都市で劇場公開される。
監督・脚本デビュー作『ある朝スウプは』(05)で、第46回日本映画監督協会新人賞、第26回ぴあフィルムフェスティバルPFFアワード2004グランプリ、第23回バンクーバー国際映画祭ドラゴン&タイガー・ヤングシネマ・アワードを受賞。『凶悪』(13)では、白石和彌監督と共同脚本で、第37回日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞。近作に、第73回カンヌ国際映画祭オフィシャル・セレクション2020選出の『朝が来る』(20/監督:河瀨直美)、『東京リベンジャーズ』シリーズ(21、23/監督:英勉)など。
劇作家、演出家、演劇ユニットiaku主宰。緻密な会話が螺旋階段を上がるようにじっくりと層を重ね、いつの間にか登場人物たちの葛藤に立ち会っているような対話中心の作劇に定評がある。受賞歴に第15回日本劇作家協会新人戯曲賞「エダニク」、第 1回せんだい短編戯曲賞「人の気も知らないで」、第26回OMS戯曲賞佳作「逢いにいくの、雨だけど」。第72回文化庁芸術祭賞新人賞<関西>、平成30年度咲くやこの花賞(大阪市)ほか。 第22回、23回、25回鶴屋南北戯曲賞にノミネート。2021年、第65回岸田國士戯曲賞の最終候補8作品へ選出される。
2019年に初演され、東京・大阪全23ステージが超満員となり、母・昭子役の枝元萌が第27回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞するなど、各所で話題を呼ぶ。22年には3年ぶりに再演された。
うえはら・せいや/1996年生まれ、神奈川県横須賀市出身。一眼レフのファインダーを覗いた瞬間カメラの世界に魅せられ、フォトグラファーとしての道を志す。その後、盟友となる映像監督Spikey Johnとの出会いによりシネマトグラファーとしても開花し、その独自の視点から切り取ったリズム感を感じるカメラワークや色彩センスが多方面で評価を受ける。代表作に木村太一監督の「Mu」(19)『AFTERGLOWS』(23)がある。
くまの・あきひと/1985年生まれ、北海道出身。約10年間、北野武監督、山崎貴監督他多数の現場を経験したのち、ドラマの照明助手を経てCMメインで照明チーフを務める。CMの他、MVでも照明技師として活動中。
いわさき・かんし/1996年生まれ、愛知県出身。立教大学社会学部卒業。大学在学中から映画美学校フィクションコースで映画を学ぶ。監督をしたり演出部をしたり録音部をしたりしながら暮らしている。
都内にてヘアメイクとして活動後、国立台湾師範大学への留学経験を生かしアジアなど活動範囲を拡げる。2018年Yuka Washizuから独立。コスメティックスの成分や性質を熟知し、ウェルネスビューティを軸にモード、ビューティーに加え、生命力あるエネルギッシュなメイクを得意とする。ファッション、ビューティー、アーティスト、広告、映画『AFTERGLOWS』(23/監督:木村太一)、 『December』(23/監督:アンシュル・チョウハン)など、様々な分野で活動中。
うちだ・ともき/福岡県出身。映画、CM、MV、中国作品など数々の現場に演出部として参加。主な作品に日中合作映画『一夜再成名』(17/監督:梁華生)、『逢いたい』(19/監督:畢國智)、『たぶん』(20/監督:Yuki Saito)、2022年の短編オムニバス映画『MIRRORLIAR FILMS Season2』の一編「巫.KANNAGI」(監督:柴咲コウ)、23年の『ココでのはなし』(監督:こささりょうま) などがある。
しばざき・まどか/1990年生まれ、埼玉県出身。2015年に写真家として独立し、『左様なら』(19/監督:石橋夕帆)でスチールマンとして活動を始める。『彼女が好きなものは』(21/監督:草野翔吾)、『愛なのに』(22/監督:城定秀夫)、『猫は逃げた』(22/監督:今泉力哉)、『LOVE LIFE』(22/監督:深田晃司)など数々の映画スチールを手がける他、雑誌、広告、カタログ、アーティスト写真など幅広く活動。
おのがわ・ひろゆき/ベルリン国際映画祭パノラマ部門ノミネートの『ユメノ銀河』 (97)『五条霊戦記//GOJOE』(00) など石井聰亙(現:石井岳龍)監督の音楽を担当。『さようなら』(15/監督:深田晃司)でプロデューサー&音楽を担当して以降、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞の『淵に立つ』(16)、『海を駆ける』(18)、ロカルノ国際映画祭コンペティションノミネートの『よこがお』(19)でも深田作品の音楽を手がけている。2020 年、楽曲を提供した映画「エイリアンとの交信を追い求めて」(監督:マシュー・キリップ)がサンダンス映画祭ドキュメンタリー短編グランプリ受賞。
えみ・りゅうせい/監督・プロデューサー・俳優。映画製作、CM、MVなど映像制作、芸能事務所、衣装デザインを手がける株式会社emir heartを2008年に設立。俳優、デザイナーの他、この世界を切り取る独特な視点を持つ写真家、映画監督としても活動。初監督作「THE BELL」(21)は多くの国内外映画祭で受賞。撮影監督作『彼女はなぜ、猿を逃したか?』(22/監督:髙橋泉)が東京フィルメックスに入選した。
2006年生まれ、東京都出身。 10代前半のアマチュア時代より、高橋幸宏、TOWA TEI、細野晴臣、ROTH BART BARONといったアーティストとの共演を果たし、22年2月「Sentiment / Your Song」で本格デビュー。たちまち国内外における数多くのプレイリスト・チャートに入り、注目のニューカマーとなる。11月にはセカンド・シングル「きみはもうひとりじゃない」(作詞:加藤登紀子 作曲:江﨑文武)をリリースした。本作の主題歌「それでも明日は」は、作詞をシンガー・ソングライターで詩人の柴田聡子が、作曲を人気トラックメーカーのUTAが手がけた。10代の終わりの女性のもつ不安と希望が、ひりひりとした痛みを伴ってヴィヴィッドに描き出されている。本作の主人公・千夏の心情を代弁するものであり、また彼女の“これから”を後押しする応援歌ともなっている。
乳がんは日本人女性において最も罹患率の高いがんであり、患者数は年々増え続けています。2021年には約9万人の日本人女性が乳がんにかかったと推計されています。そして、35歳未満の乳がんを「若年性乳がん」といいます。本作の主人公・千夏は、その中でも特にAYA世代と呼ばれる世代でがんと診断されます。AYA世代とは、Adolescent&Young Adult(思春期・若年成人)の頭文字をとったもので、主に思春期の15歳から30歳代までの世代を指しています。日本では、毎年約2万人のAYA世代が、がんを発症すると推定されており、若年性乳がんは、乳がん患者全体に対し35歳未満の割合は2.7%、30歳未満はわずか0.5%と少数ですが、乳がん患者の増加に伴って、若い世代の乳がんも増えてきています。(出典:国立がん研究センターがん情報サービス)
乳がんの主な症状は、乳房のしこりです。自分で見つけることのできるがんの1つですが、35歳未満は国の乳がん検診が実施されておらず、自ら検査に行くという意識も薄い世代のため、すでに症状が進行し、しこりが大きくなってから気づくケースが多いのが特徴です。早期発見のため、日頃からセルフチェックを心がけることが大事です。